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利益率を上げるためには?重要な視点や具体的な方法、分析の仕方を解説

2024年9月5日
利益率を上げるためには?重要な視点や具体的な方法、分析の仕方を解説

企業経営において利益率の向上は永遠のテーマですが、単に「利益率を上げる」といっても、その方法は一様ではありません。

まずは、自社の財務状況をより深く分析するために、企業における利益の種類を把握し、そのうえで具体的な方法につなげることが大切です。

この記事では、利益の種類や利益率を上げるための視点、具体的な方法を紹介します。
正しい視点をもったうえで自社に最適な戦略を見出し、持続可能な利益率向上の実現を目指してください。

会社における利益の種類

会社における利益の種類

会社の経営状況を把握するうえで重要な指標である利益には、以下のようにいくつか種類があります。

利益の種類計算方法特徴
粗利(売上総利益)売上高-売上原価商品やサービスの販売による基本的な利益
営業利益粗利-販売費および一般管理費企業の本業での営業力で得た利益
経常利益営業利益+営業外収益-営業外費用企業の通常の事業活動による総合的な収益力
税引前当期純利益経常利益+特別利益-特別損失税金を除いた、期間中のすべての損益を反映
当期純利益税引前当期純利益-法人税等一会計期間の最終的な経営成績

営業利益は本業で稼ぐ力を、経常利益は総合的な収益力を評価するための指標です。

利益率を上げるためには、利益の種類を明確に把握し、企業の収益構造や財務状態を多角的に分析したうえで、経営判断や投資判断をおこなうことが大切です。

利益率を上げるための視点

利益率を上げるための視点

利益率を上げるためには、ただ単に売上を増やすだけでなく、多角的な視点から戦略を立てることが重要です。

正しい視点がわかったうえで施策を講じられると、本質的な利益率の向上につなげられます。

ここでは、オーストリアの経営学者であるピーター・ドラッカーの名言「利益は、マーケティングとイノベーションと生産性に関わる仕事ぶりの結果である。」に沿って、3つの観点から利益率向上のアプローチを考えてみましょう。

マーケティング

利益率を上げるためには、効果的なマーケティング戦略が不可欠です。

ピーター・ドラッカーが提唱するマーケティングの本質は「営業しなくても商品が売れる仕組みを作ること」にあります。
マーケティングの基本的な流れは、以下のとおりです。

  1. 市場調査と分析で、顧客ニーズを正確に把握する
  2. 消費者を分類し、自社の強みを活かせる層を特定する(顧客セグメンテーション)
  3. 競合他社との差別化戦略を構築し、顧客にアピールする
  4. 商品・サービスの内容を決定し、価格設定・販売チャネル・プロモーション方法を検討する
  5. 実施した戦略の成果を評価し、PDCAサイクルを回す

これらのステップを着実に実行すると、顧客が自然に商品やサービスを求めるような仕組みを構築できます。

インターネットで情報を得ることが当たり前になっている現代では、デジタルマーケティングの活用も重要です。
SNSやWebサイトを通じて、ターゲット顧客に直接アプローチできるでしょう。

ほかにも、顧客に価値のある記事や動画を作成・配信するコンテンツマーケティングや、SNS上で大きな影響力をもつインフルエンサーに商品やサービスをPRしてもらうインフルエンサーマーケティングなどの方法もあります。

顧客のニーズを深く理解し、それに応える価値を時代の変化に柔軟に対応しながら提供し続けることが、持続的な利益率向上につながります。

イノベーション

イノベーションとは、顧客へより良い商品やサービスを提供して、顧客満足度を向上させることです。

イノベーションを通じて利益率を上げるためには、以下のような方法を取り入れるのが効果的です。

イノベーション例具体例
プロダクトイノベーション・新製品や新サービスの開発
・既存製品の機能や品質の大幅な改善
プロセスイノベーション・生産方法や配送システムの効率化
・業務プロセスの抜本的な見直し
ビジネスモデルイノベーション・新しい収益モデルの構築
・顧客との関係性や価値提供方法の変革

また、イノベーションの成果を適切に評価し、継続的に改善していくことも忘れてはいけません。

短期的な利益だけでなく、中長期的な企業価値の向上につながるイノベーションを追求できると、持続的な利益率の向上につなげられます。

生産性

生産性とは、企業が投入した経営資源(人手・物資・資金)に対して、どれだけの付加価値を生み出したかを示す指標のことです。
限られた資源を、いかに効率的に活用して、高い価値を創出できているかを表します。

利益率を上げるためには、同じ労働力で、より多くの生産や売上を実現できることが大切です。

そのためには、マーケティング戦略の見直しやイノベーションの推進、従業員の能力開発など、多角的なアプローチが必要となります。

継続的な生産性向上の取り組みは、企業の持続的な成長と競争力強化につながります。
経営者は常に生産性向上を意識し、適切な施策を講じていくことが求められるでしょう。

利益率を上げるための4つの方法

利益率を上げるための4つの方法

利益率を上げるためには、戦略的なアプローチが不可欠です。

ここでは、効果的な4つの方法を紹介します。
これらの方法を組み合わせて実践すると、持続的な利益率の向上が期待できます。

自社の状況に合わせて最適な戦略を選択し、継続的に改善を図っていきましょう。

1.売上アップ

売上原価や販管費を維持しながら売上がアップできると、営業利益が増えていきます。
具体的な方法として、以下のような取り組みが効果的です。

売上アップ施策例具体例
販売単価・サービス単価の見直し付加価値をつける
・商品の品質アップ
・サービスの拡充
・パッケージの改良など
販売数量の増加・期間限定キャンペーンの実施
・顧客満足度向上によるリピート率アップ
・ポイントカード制度の導入
新規顧客の獲得・ターゲット層の分析と絞り込み
・効果的な広告と宣伝活動
・紹介制度の導入
リピーターの獲得・既存顧客に合わせた商品やサービスの提案
・人気クーポンの提供
・ランクアップ制度の導入
オンライン販売の強化・自社ECサイトの構築
・大手ECモールへの出店
・SNSを活用した販売促進

これらの方策を組み合わせて実施すると、売上アップにつながりやすくなります。

ただし、売上アップの取り組みは、単に売上を追求するだけでなく、顧客満足度を維持・向上させながらおこなうことが重要です。

売上を上げるための方法やリピーターを増やすための方法については、以下の記事も参考にしてください。

売上を上げるための方法とは?店舗・企業の売上は3つの要素で決まる!

リピーターを増やすにはどうすればいい?顧客獲得の対策方法を実例とともに解説!

2.コスト削減

利益率を上げるためにはコストを削減する方法もありますが、ここで大切なのは、むやみに経費を切り詰めるのではなく、バランスを考えて調整することです。

まず、現在の支出を詳細に分析し、無駄な経費の洗い出しから始めましょう。
たとえば、原材料費や外注費などの「変動費」、人件費や家賃などの「固定費」などを確認してみてください。

削減できそうな項目を出したら、優先順位をつけて対応を進めていきます。

おもな方法としては、仕入先との交渉による原材料費の見直しや業務効率化による残業代の削減、デジタル化によるペーパーレスやリモートワーク導入による経費削減などが考えられます。

ただし、過度なコスト削減は、従業員のモチベーション低下や製品・サービスの質の低下につながる可能性があるため注意が必要です。

以下の点を踏まえて、コスト削減を進めましょう。

  • 削減後も必要な品質・サービスレベルを維持できるか
  • 従業員の労働環境や待遇に悪影響がないか
  • 将来の成長に必要な投資は確保されているか

コスト削減を実施したあとは、その効果を定期的に検証することが重要です。
削減効果が期待通りでない場合や、現場に混乱が生じている場合は、迅速に軌道修正をおこなわなければなりません。

コスト削減方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
あわせてご覧ください。

コスト削減方法のアイデア5選|今すぐ実践できる現実的アプローチも解説

3.業務効率化

効率化によって同じ業務量をより少ないリソースでおこなえると、コスト削減につながります。
結果として、利益率を上げやすくなるでしょう。

業務効率化を進めるには、以下の3ステップを踏むのがおすすめです。

  1. 業務の見える化
  2. 業務の流れ(ワークフロー)の適正化
  3. 業務システムの導入

社内すべての業務やワークフローを洗い出し、それぞれの価値を明確にすると、優先度の高い業務に、より多くのリソースを割り当てられるようになります。

無駄な作業を省けるよう、現場の意見を聞きながら、ワークフローを見直すことも必要です。

業務システムは、効率化を図れる業務が明確になったタイミングで導入しましょう。
システム化により、正確かつ迅速に業務遂行できるようになり、業務の属人化も防止できます。

ただし、コスト削減が、かえって売上低下につながる可能性もあります。
どの業務を、どのように効率化するか、慎重に検討しなければなりません。

4.顧客満足度の向上

満足度の高い顧客は、リピート購入や口コミによる新規顧客の獲得によって、売上と利益率の向上をもたらします

良い製品・サービスを提供し続けるには、顧客の期待値を把握しなければならず、顧客満足度は利益率向上に欠かせない重要な指標です。

明確に把握するために、インターネット調査やアンケート調査、ヒアリング調査などで確認しましょう。
顧客満足度を向上させるための方法は、以下のとおりです。

  • 既存顧客のカスタマーサクセスを強化する
  • 従業員満足度を向上させる
  • CRM(顧客関係管理システム)を導入する

カスタマーサクセスとは、企業が提供する製品やサービスを通じて、顧客の成功を支援する取り組みのことです。

自社商品やサービスに対して生じそうな疑問を想定して、早めにフォローする方法などがあります。

社員の満足度はモチベーションにも影響し、上がることで良い商品やサービス、接客が生まれると考えられています。

結果として、利益率の向上にもつながるため、社員のフォローも丁寧におこなっておくことが大切です。

また、顧客情報が一元管理できるCRMを活用する方法も、効率良く顧客分析でき、施策につなげられるようになる効果的な方法です。

CRMについては、以下の記事も参考にしてください。

CRM(顧客管理システム)とは?基本機能や導入メリットをわかりやすく解説

利益率を上げるための分析

利益率を上げるための分析

利益率を上げるためには、自社の現状を正確に把握し、適切に分析することが重要です。

ここでは、粗利の細分化と顧客数の分析、客単価の検討という3つの観点で紹介します。

粗利

利益率を上げるためには、まず自社の粗利(売上高-売上原価)を細分化して分析します。
粗利を製品やサービスごとに細かく分けて考えると、改善点が見えてくるでしょう。

たとえば、以下の項目で細分化できます。

  • 顧客要素:新規顧客、リピーター
  • 単価要素:商品数、商品単価
  • 利益率要素:売上原価、不良在庫数、作業効率など

粗利の高い製品やサービスを重点的に販売すると、全体の利益率を向上させられます。
一方で、粗利の低い製品やサービスがあれば、原因を突き止めて改善策を検討することが可能です。

また、細分化した粗利は、新製品や新サービスの開発方針を決める際の参考にもできるでしょう。

顧客

顧客数を増やせれば、売上を伸ばして利益率を上げられます。
以下3つの視点で、顧客を分析しましょう。

  • 顧客セグメンテーション
  • LTV(顧客生涯価値)の算出
  • CAC(顧客獲得コスト)の把握

顧客を属性や購買行動によってグループ分けすると、各セグメントに適したアプローチが可能になります。

分析結果をもとに、ターゲット顧客に合わせて商品開発やサービス改善を図る、顧客セグメント別のマーケティング戦略を立案する、ポイント制度や会員特典などを導入するなどのアクションにつなげられるでしょう。

1人の顧客がもたらす粗利の合計であるLTVは「平均購入単価 × 粗利率 × 1年間の購入回数 × 継続年数」、新規顧客を獲得するために必要なコストであるCACは「マーケティング費用 ÷ 新規顧客獲得数」で把握できます。

これらの分析結果を活用すると、優良顧客を特定して重点的にアプローチできたり、LTVの高い顧客セグメントへの販促を強化できたりします。

また、CACを抑えつつ、効果的な顧客獲得のための施策を図ることも可能です。

客単価

客単価を正確に把握し戦略的に向上させられると、利益率を上げ、ビジネスの成長につなげられます。

客単価は「客単価 = 売上高 ÷ 客数」で計算します。
詳細に分析するためには、ユニーク客数や購入点数も考慮しましょう。

ユニーク客数とは、特定期間内の異なる顧客の総数のことです。
新規顧客とリピート顧客の比率把握に有効であり、広告キャンペーンの効果測定にも活用できます。

購入点数は、顧客が平均的に購入する商品やサービスの数です。

「特定の期間内に購入された商品やサービスの総数 ÷ 顧客数」で計算でき、分析により価格戦略の最適化以外にも、以下の内容ができるようになります。

  • クロスセル(関連商品の提案)とアップセル(高額商品の提案)の機会発見
  • 在庫管理の効率化
  • マーケティング戦略の改善

これにより、コスト削減や売上アップが図れ、結果として利益率向上につながります。
定期的に客単価を検証し、改善策を講じることで、持続可能なビジネスモデルを構築できます。

利益率を上げるには正しい視点と自社に最適な戦略が必要

利益率を上げるには正しい視点と自社に最適な戦略が必要

利益率を上げるためには、正しい視点と自社の状況に合わせた戦略が不可欠です。

自社の財務状況を正確に把握し、改善が必要な領域を特定したあと、マーケティング・イノベーション・生産性という3つの視点で戦略を考えていきましょう。

利益率を上げるおもな方法には、売上アップ・コスト削減・業務効率化・顧客満足度の向上が挙げられます。
自社の状況に応じて最適化できると、持続的な利益率の向上が期待できます。

ただし、短期的な利益追求に走るあまり、長期的な成長や顧客満足度を損なわないよう注意が必要です。

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