美容室のマーケティング戦略｜新規顧客の獲得からリピート率の向上まで
美容室の数は年々増加しており、厚生労働省の「令和4年度 衛生行政報告例」では、全国で26万9,889軒に達しました。
美容業界では、マーケティング戦略が激戦を勝ち抜く鍵となります。
この記事では、美容室経営における効果的なマーケティング戦略を、新規顧客の獲得からリピート率の向上まで解説します。
ぜひ、美容室の成長戦略に役立ててください。
美容室におけるマーケティングの重要性
美容室におけるマーケティングは、競合他社との差別化を図りながら適切な施策を取り入れるために重要な対策といえます。
マーケティングの成功により、ブランディングの確立や集客率の強化を図れるでしょう。
まずは、美容室におけるマーケティングの重要性を3つの観点で解説します。
競争激化する美容業界での差別化
美容業界は年々競争が激化しており、このような状況下で美容室が生き残るためには、他店との差別化が不可欠です。
まずは、年齢層や職業、ライフスタイルなどを具体的に想定してニーズを捉え「だれに」「どのような価値を」提供するのかを明確にしたコンセプトを設計することが大切です。
たとえば「働く女性に癒しの時間を提供する」などの内容が考えられます。
近年のマーケティングでは、サービスの利用によって得られる顧客体験価値（UX）も重要視されているため、このコンセプトをもとに最適な施策を考えられると競合他社との差別化を図れます。
顧客ニーズの多様化への対応
美容業界においても、顧客ニーズは年々多様化しており、それに対応していくことがマーケティング成功の鍵となります。
美容室の顧客ニーズは、従来「髪を切る・染める」といった内容がメインでした。
近年では、ヘアケア商品の販売やヘッドスパ、さらにはネイルやまつ毛エクステなど、求められるサービスも増えてきています。
これらに適切に対応するためには、顧客ニーズを引き出して把握し、応えていかなければなりません。
そこで、顧客との対話で「なぜ？」を繰り返し尋ね、表面的な要望（ウォンツ）から本質的なニーズを探り出しましょう。
より詳細なニーズを把握するには、アンケートやSNSでの反応など、さまざまなデータを分析し、仮説を立てて検証を重ねていくのがおすすめです。
把握したニーズは、サービスの改良や新規開発につなげてください。
ニーズは常に変化するため、普遍的な欲求を軸にしつつ、柔軟に対応していくことが大切です。
長期的な経営安定化のための戦略
美容室経営を長期的に安定させるためには、ファンを獲得しリピーターにつなげることが重要です。
ファンは自ら情報を発信し、口コミを広げてくれる貴重な存在です。
SNSが普及した現代では、ファンによる情報発信力は高く、マーケティング効果も期待できます。
ファンを獲得するためには、顧客との信頼関係を築き、継続的なコミュニケーションを図ることが不可欠です。
美容室の強みを活かしながら、顧客との絆を深める取り組みをおこなうと、安定した経営基盤を築けるでしょう。
具体的な戦略として、以下の3点が挙げられます。
- 自社の価値観を明確にする
- ファンになりそうな顧客を探し、関心ごとを理解する
- ファンとの接点を増やす（対面・SNS・DMなど）
たとえば、美容室のコンセプトや理念をSNSで発信したり、顧客ごとの好みや要望を記録し、次回来店時に活用したりする方法が効果的です。
美容室で新規顧客を獲得するためのマーケティング戦略の基本
美容室で新規顧客を獲得するためには、まず自社の強みを明確にし、ターゲットに合わせた効果的な戦略を立てることが重要です。
効果的なマーケティング施策のための、基本的なポイントを解説します。
ターゲット層の明確化
マーケティング戦略において、美容室を利用するターゲット顧客層の明確化は重要なポイントです。
競合が多い美容業界では、幅広い客層を対象にするより特定の顧客層に焦点を当てたほうが、より効果的な戦略を図れます。
以下の視点で、具体的な顧客像を描きましょう。
- 顧客の属性：年齢、性別、職業、家族構成、所得など
- 地域特性：住所、地域の気候、都市規模など
- 顧客の心理的・行動的特徴：美容に対する価値観、新しいスタイルへの反応、予約方法の好み、来店頻度、価格への感度など
たとえば「30代の子育て中の女性で、自然派志向が強く、ヘアケアに時間をかけたい人」といった内容が考えられます。
ターゲットを絞ると、サービス内容や価格設定の最適化、効果的な広告戦略の立案などが可能になります。
独自の価値（USP）の確立
競争が激化する美容業界では、自社の独自性を打ち出すことが新規顧客の獲得のために重要になります。
そこで注目したいのが、競合他社には真似できない自社ならではの強み「USP（Unique Selling Proposition）」の考え方です。
USPを確立するには、以下の3つの基準を意識しましょう。
- 顧客へ提案する広告
- 独自性のある提案
- 顧客の心を強く揺さぶる提案
たとえば、美容室では「オーガニック商品のみを使用した髪に優しい施術」「完全予約制による贅沢な時間」などが考えられます。
USPが決まったあとは、それを顧客に効果的に伝えるマーケティング施策を検討します。
WebサイトやSNS、店舗での掲示など、さまざまな接点で一貫したメッセージを発信することが大切です。
顧客体験（CX）の設計と最適化
顧客体験（CX）の設計と最適化は、美容室の差別化において重要なマーケティングの考え方です。
CXとは、顧客と美容室とのすべての接点で感じる印象や経験の総体を指します。
最適化できると、新規顧客の獲得のほか、リピート率の向上も図れます。
設計時には、以下3つのポイントに注目しましょう。
- カスタマージャーニーマップの作成：顧客の行動や感情を時系列で可視化し、改善点を見出す
- 顧客接点の最適化：予約・来店・施術・会計など各接点での体験を向上させる
- フィードバックループの構築：顧客の声を継続的に収集・分析し、サービス改善に活かす
また、CX最適化のためには、オンライン予約システムの導入や待ち時間を快適に過ごせる空間づくり、スタイリストとの丁寧なカウンセリング、施術後のアフターフォローなどのような取り組みが効果的です。
美容室におすすめのオンラインマーケティング手法3選
美容室の集客を効果的におこなうためには、オンラインマーケティングの活用が不可欠です。
現代では、インターネット上から情報を得る人が多く、美容室のマーケティングにおいても必須の手法といえます。
ここでは、おすすめの手法を3つ紹介します。
1.自社Webサイトの最適化とSEO対策
美容室の経営で重要なのが、自社のWebサイトの最適化です。
Googleなどの検索エンジンで潜在顧客が検索したとき、自社Webサイトが検索結果の上位に表示できると、認知度の向上や集客増加が期待できます。
そのために必要な施策が、SEO対策です。
SEO対策には、内部リンク（コラムなどの内部記事）の適切な設定や画像の軽量化など、さまざまな知識とスキルが必要です。
また、Googleに表示されるためには、有益な情報で人の役に立つと判断されなければならず、不要なコンテンツをなくしたり、コンテンツの文章構造を正しく設定したりなどの工夫を施さなければなりません。
効果的なSEO対策を取るために、外部に依頼する企業も多くあります。
コストを抑えてSEO対策を図りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
SEO対策を低価格で成功させるポイントと代行会社に依頼する際の注意点
2.SNSを活用したブランディングと顧客エンゲージメント
InstagramやX、FacebookなどのSNSは、美容室のブランディングと顧客エンゲージメント（企業と顧客との間の信頼関係）に効果的なツールです。
SNSは多くの人が日常的に利用しており、視覚的な情報を即時に共有できるうえ、口コミ効果も期待できます。
以下のように活用すると、美容室の魅力を効果的に伝えられるでしょう。
- 施術前後の写真投稿
- スタッフの日常や裏側の紹介
- 美容情報の発信
- キャンペーンやイベントの告知
- ユーザー投稿の活用
施策の組み合わせにより、潜在顧客に直接リーチできたり、認知度アップを図れたりできます。
ただし、SNSは炎上リスクもあるため、慎重な投稿が必要です。
3.オンライン予約システムの導入と活用
美容室にとって、オンライン予約システムの導入は、顧客の利便性向上と業務効率化の両面で大きなメリットがあるマーケティング手法です。
24時間予約受付や予約管理の効率化、顧客データの一元管理が実現するうえ、リマインド機能によりキャンセル率の低減にも貢献するでしょう。
活用のポイントは、システムを単なる予約受付ツールではなく、顧客満足度向上とマーケティング戦略立案のためのツールとして捉えることです。
予約データの分析により、顧客ニーズに合わせたパーソナライズされたアプローチも可能になります。
使いやすさとスマートフォン対応を重視したうえで、SNS連携機能があるとより効果的です。
継続的な活用とカスタマイズにより、競合他社との差別化を図れます。
美容室の予約システムには、アプリの導入もおすすめです。
以下の記事も参考にしてください。
サロン予約管理アプリとは？導入するメリットやおすすめの方法を解説
美容室におすすめのオフラインマーケティング手法3選
美容室の集客においては、オフラインで顧客との直接的なコミュニケーションを大切にすると、信頼関係を築きやすくなるでしょう。
結果として、リピーターの獲得や口コミの拡大につながりやすくなります。
美容室におすすめのオフラインマーケティング手法を3つ紹介します。
1.地域密着型のイベント企画と参加
地域密着型のイベント企画と参加は、美容室の認知度向上や新規顧客獲得に効果的なオフラインマーケティング手法です。
地域に根ざしたイベント活動を通じて美容室の存在感を高め、地域住民との信頼関係を築けると、長期的な経営安定化につながりやすくなります。
たとえば、以下のような取り組みが考えられます。
- 子ども向け職場体験イベントへの参加
- 地域のお祭りや花火大会などでの出張サービス
- 地域の学校や福祉施設でのボランティア活動
イベント参加は、認知度向上や信頼関係構築のほかに、スタッフの成長にもつながる良い機会です。
2.口コミ戦略の構築と実践
美容室のマーケティングにおいては、オフラインでの口コミ戦略も重要です。
友人や知人からの口コミは信頼性の高い情報であり、新規顧客の獲得に大きな影響を与えます。
効果的に構築・実践するためのポイントは、以下のとおりです。
- 顧客体験の最適化：サービスの質向上、スタッフの接客スキル向上、サロン内の雰囲気づくり
- 口コミを促す仕組みづくり：来店後のフォローアップ、紹介カードの活用、紹介特典の実施
- 口コミが促進できる環境づくり：友達紹介キャンペーンの実施、地域イベントへの参加、サロン内での顧客の声掲示
これらの施策を組み合わせて継続的に実践すると、効果的な口コミ戦略を展開できます。
ただし、過度な誘導は避け、自然な形で口コミを促進することが大切です。
3.他業種とのコラボレーション展開
他業種とのコラボレーション展開は、美容室にとって新たな顧客層の開拓や独自の付加価値創出につながる重要なマーケティング戦略です。
認知度向上のほか、新たな収益構造の獲得につながります。
美容室が取り組める具体的なコラボレーション例は、以下のとおりです。
- アパレルブランド：限定ヘアスタイルと衣装のセットメニュー、ファッションショーでのヘアメイク担当
- カフェ：美容室内にカフェスペースを設置
コラボレーション展開を成功させるためのポイントは、相手企業の強みを活かし、お互いにWin-Winの関係構築を目指すことです。
また、顧客にとっての価値の明確化も大切です。
他業種とのコラボレーション展開は、従来のサービス領域を超えた新たな価値提供が可能になります。
顧客満足度向上や競合他社との差別化にもつながるため、取り組む価値はあるでしょう。
美容室のリピート率向上のための顧客維持マーケティング戦略
美容室経営において、新規顧客の獲得と同様に重要なのが、既存顧客の維持です。
リピート率向上により、安定した収益を確保できるだけでなく、口コミによる新規顧客の獲得にもつながります。
ここでは、効果的な顧客維持マーケティング戦略を紹介します。
パーソナライズされたフォローアップ施策
美容室のマーケティング戦略では、顧客一人ひとりのニーズに合わせたフォローアップが重要です。
顧客に寄り添ったコミュニケーションが実現できると、美容室への愛着や信頼度が上がる顧客ロイヤリティの獲得につながり、リピーター率も向上します。
具体的な施策は、以下のとおりです。
- 顧客データの収集と分析：属性情報、来店履歴、SNS活動などを統合・分析
- セグメンテーション：来店頻度、年代、好みのスタイル別などでグループ化
- パーソナライズされたコンテンツ作成：ヘアケアアドバイス、スタイル提案、キャンペーン案内など
- 多様なチャネルでの情報発信：メール、LINE、SNS、アプリなど
- AIの活用：チャットボット対応、最適化した提案など
これらを組み合わせると、より顧客に寄り添ったコミュニケーションが可能になります。
ロイヤルティプログラムの設計と運用
ロイヤルティプログラムとは、美容室への信頼度が上がる顧客ロイヤルティと、愛着や親近感を覚える顧客エンゲージメントを高めるためのマーケティング施策です。
適切な設計・運用により、熱心なリピーター獲得につながります。
効果的なロイヤルティプログラムにするためには、単なる割引やポイント付与だけでなく、顧客に特別な体験価値を提供することが重要です。
設計のポイントとして、以下が挙げられます。
- カスタマージャーニー（顧客の購買行動）に合わせた各段階での適切な施策
- ハードベネフィット（具体的で直接的な利益）とソフトベネフィット（感情的な価値）の組み合わせ
- アプリ・Webサイト・SNSなど、デジタル技術の活用
- 定期的な効果測定と改善、PDCAサイクルの実施
ポイントを押さえて設計・運用できると、顧客満足度の向上と顧客との長期的な関係構築を実現できます。
具体的には、VIP特典の付与や限定イベントへの招待、パーソナライズされたサービスなどが効果的です。
なお、顧客ロイヤルティを測る指標には「NPS」があります。
詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
NPSとは？導入するメリットや計算方法、質問項目、活用術まで詳しく解説
カスタマーサクセス体制の構築
美容室のマーケティングで顧客満足度を高め、リピート率を向上させるには、カスタマーサクセス体制の構築が不可欠です。
以下の方法で体制を整えておくと、迅速かつ適切に顧客対応できるようになります。
- 組織に必要な役割を把握
- 組織の目的を明確化し、どのフェーズに注力すべきか決定
- カスタマーサクセス部門を組織の中心に位置づけ、他部門との連携を強化
- 適切な人材確保と継続的な教育
- 顧客データ管理や分析を効率化するツールを導入（CRMツールなど）
これらにより、美容室に適したカスタマーサクセス体制を構築できます。
顧客一人ひとりに寄り添ったサービスを提供し、長期的な関係構築を目指しましょう。
リピーター獲得については、以下の記事も参考にしてください。
リピーターを増やすにはどうすればいい？顧客獲得の対策方法を実例とともに解説！
効果的なマーケティング戦略で美容室経営を成功させよう
効果的なマーケティング戦略で美容室経営を成功させるには、自社の強みを明確化し、ターゲットを絞り込んだうえで、オンライン・オフライン施策のバランスを考えながら実施することが大切です。
自社に合った戦略を組み立て、粘り強く実践すると、競争激化する美容業界でも持続的な成長が期待できます。
マーケティング戦略は、PDCAサイクルを回しながら最適な内容を見出していくことが成功の鍵です。
データ分析と改善を継続し、全スタッフで統一できるようマインドも共有しておきましょう。
近年では、スマートフォンを活用したモバイルマーケティングも有効な手段です。
株式会社プラストの提供する統合ソリューションシステムについても、ご覧ください。
