飲食店開業に必要な準備は?流れとやることリストを解説

飲食店の開業には、さまざまな準備と手続きが必要です。
スムーズに新規オープンするためには、開店までの全体像を把握したうえで、必要な準備を済ませておかなければなりません。
この記事では、飲食店開業に向けた具体的なやることリストと準備の流れ、必要な期間の目安を解説します。
準備を進めるための参考にしてください。
飲食店開業に向けたやることリストと流れ

飲食店開業に向けたやることリストとその流れは、以下のとおりです。
- コンセプト設計
- 市場調査
- 事業計画書の作成
- 物件探し
- 資金調達
- 店舗設計・内装工事
- メニュー開発
- 仕入れ業者選定
- 人材採用
- 必要な届出
- 販促計画
ステップごとに詳しく解説します。
1.コンセプト設計
コンセプト設計は、飲食店開業の準備においてもっとも重要なステップです。
設計により、統一した経営戦略を立てられるようになります。
以下の5W1Hを意識しながら、具体的に検討していきましょう。
- What:どのような料理を提供するか
- Who:ターゲットとする顧客層は誰にするか
- Where:立地はどこが最適か
- When:営業時間帯をどうするか
- Why:なぜその店を開業したいのか
- How:どのようなサービスを提供するか
これらの要素を明確にすると、店舗物件の選定やメニュー開発、人材採用など、その後の準備がスムーズに進められます。
たとえば、「20-30代のOL向けにオーガニック食材使用のヘルシーランチを提供する。場所は駅近のオフィス街で平日11:00~15:00に営業。健康的な食事を手軽に提供できるよう、セルフサービス形式で低価格を実現する」などのようなコンセプトが考えられます。
2.市場調査
市場調査では、ターゲット層の生活スタイルや競合店の状況を徹底的に分析する必要があります。
具体的には、以下3つのポイントに注目して調査を進めましょう。
ポイント | 詳細 |
---|---|
競合店の調査 | ・営業時間や顧客層 ・メニュー構成と価格帯 ・サービスの特徴や評判 ・混雑状況や客単価 |
商圏の分析 | ・昼夜間人口の変動 ・駅の乗降客数 ・オフィスや住宅の分布 ・近隣の開発計画 |
ターゲット層の分析 | ・年齢や性別 ・職業や所得層 ・生活習慣や消費傾向 ・来店のきっかけとなる動機 |
これらの調査には、実地での観察だけでなく、インターネットの口コミサイトやSNSの分析、自治体が公開している統計データなども活用できます。
特に、競合店に何度か足を運んで実際に顧客として体験すると、必要なサービスの質や改善点を把握できます。
3.事業計画書の作成
事業計画書は、金融機関からの資金調達や協力者の募集に欠かせない重要な書類です。
作成の際は、コンセプト設計で用いた5W1Hに「How much:必要資金・収支計画」を加えて考えましょう。
数値の根拠づけも重要です。
売上予測・経費計画・人員配置・返済計画など数値を扱う場面では、必ず根拠となるデータや計算式を用意してください。
また、独自性を明確化して記載するのも有効です。
たとえば、店舗コンセプトや競合との差別化ポイント、ターゲット顧客への訴求点などがあげられます。
事業計画書は遅くとも開業の3カ月前までには作成を完了し、必要に応じて修正を加えられるよう余裕をもって準備するのがおすすめです。
4.物件探し
物件探しでは、以下のポイントを重視して検討を進めましょう。
ポイント | 詳細 |
---|---|
立地条件 | ・駅からの距離 ・通行量 ・競合店の有無 ・周辺の人口動態 ・昼夜の人口比率など |
物件の種類 | 居抜き物件か、新規物件か |
賃貸条件 | ・保証金 ・礼金 ・仲介手数料 ・前家賃 ・造作譲渡費など |
物件には、居抜き物件と新規物件があります。
居抜き物件は、厨房設備や内装がすでにある状態であり、初期投資を抑えつつ、開業までの時間が短縮できるメリットがあります。
満足できる居抜き物件に出会った場合には、検討する余地があるでしょう。
一方、新規物件は自由なレイアウトが可能なため新しい設備を導入でき、競合店と差別化しやすくなります。
5.資金調達
飲食店の開業に向けて、資金調達の方法も考えなければなりません。
飲食店開業に必要な資金には、内装工事費や厨房設備費、家具・備品、運転資金などがあり、規模や経営方針によっても必要金額は変動します。
以下のような方法で、資金調達を検討するとよいでしょう。
- 自己資金
- 金融機関からの融資
- クラウドファンディング
- 補助金・助成金制度など
なかでも、融資審査では事業計画書が重要となるため、綿密な市場調査と収支計画を立てることが重要です。
経済産業省の「ミラサポplus」では、中小企業向けに補助金制度を紹介しているため、活用するのも一つの方法です。
6.店舗設計・内装工事
店舗設計・内装工事は、物件契約後すぐに取り掛かるべき重要な工程です。
施工会社を選定したあとは、以下のステップで進みます。
- プランニング・基本設計
- 見積もり確認
- 契約・着工
プランニング・基本設計では、店舗コンセプトや強みを施工会社と擦り合わせます。
予算との兼ね合いをみながら、納得のいく見積りになったら契約しましょう。
内装工事では、店舗の雰囲気作りだけでなく、衛生面や安全面にも配慮が必要です。
特に、厨房設備は保健所の基準をクリアする必要があるため、経験豊富な施工会社を選ぶと安心です。
7.メニュー開発
メニューは、顧客に選ばれるお店となるための重要な要素です。
おいしい料理の提供はもちろん、売上や利益に直結する部分になります。
メニュー開発における重要なポイントは、以下のとおりです。
- お店のコンセプトを反映させる
- メニューの構成を考える
- 集客商品を設定する
メニュー開発においては、お店のコンセプトを反映する必要があります。
ターゲットとする顧客層は誰なのか、どのような価格帯で提供するのか、お店の雰囲気はどういったものにするのかを明確にすると、メニューの方向性が定まります。
また、提供する料理の種類や数、価格設定などを検討することも重要です。
メニュー数が多すぎると食材のロスやオペレーションの複雑化につながる可能性があります。
絞り込むことで、効率的な調理や質の高いサービス提供ができるようになるでしょう。
さらに、集客商品を設定すると、他店との差別化を図れ、来店動機を高められます。
価格やボリューム、オリジナリティなどで魅力的な商品を考案することが成功のポイントです。
8.仕入れ業者の選定
飲食店を開業する前には、信頼できる食材の仕入れ業者を選定することが重要です。
食材の品質は料理の味に直結し、ひいてはお店の評判や顧客満足度に影響を与えます。
仕入れ業者を選定するためのポイントは、以下のとおりです。
- 食材の品質
- 価格
- 納期
- 衛生管理
- サービスなど
前提として、新鮮で高品質な食材を安定供給できるかを確認しましょう。
サンプル提供や産地見学などを利用して、実際に食材の品質を確かめることが重要です。
価格は、単価だけでなく送料や手数料なども含めた総コストを比較検討し、予算に見合う業者を選んでください。
食品衛生法に基づいた適切な衛生管理体制を整え、必要な食材を必要なときに確実に納品してくれる仕入れ業者は、安心できる取引が続けられます。
9.人材採用
人材採用においては、誰にどのような業務を任せたいかを明確にします。
必要なスキルや経験を考慮し、即戦力となる人材が必要であれば経験者を、そうでない場合は未経験者やアルバイト・パートの活用を検討できます。
採用活動においては、以下の点を意識すると、スムーズに自店舗に合う人材を採用できる可能性が高くなるでしょう。
- 必要な人材像を明確化する
- 適切な募集方法を選択する
- 面接時に重視するポイントもあげておく
また、採用したスタッフの育成も重要です。
お店のコンセプトや企業理念を共有し、接客レベルの向上のための教育を積極的におこなうようにするのがおすすめです。
10.必要な届出
飲食店を開業するには、以下のようにさまざまな届出が必要です。
届出先 | 届出内容 |
---|---|
保健所 | ・飲食店営業許可 ・食品衛生責任者の設置届 |
税務署 | ・個人事業主:個人事業の開業届出 ・法人:新設法人の届出 ・所得税の青色申告承認申請書 |
消防署 | ・防火対象物使用開始届出書 ・火を使用する設備等の設置届出書 ・防火管理者選任届出書、消防計画作成届出書 |
警察署 | ・深夜における酒類提供飲食店営業届出 ・風俗営業等の営業申請(届出)手続 |
労働基準監督署 | 労災保険 ・保険関係成立届 ・概算保険料申告書 雇用保険 ・雇用保険適用事業所設置届 ・雇用保険被保険者資格取得届 |
社会保険事務所 | 社会保険 ・新規適用届か、任意適用申請書 ・被保険者資格取得届 |
これらの届出は、それぞれ管轄官庁や申請時期が異なります。
事前に必要な手続きを把握し、余裕をもった準備をおこないましょう。
必要な届出については、以下の記事で詳しく解説しています。
飲食店の新規オープンで必要な届出は?手続き方法や補助金を解説
11.販促計画
飲食店で開業に合わせて効果的な集客を実現するためには、以下のような販促施策を実施することが重要です。
- オープン告知のチラシ配布
- 看板やのぼりの設置
- DM(ダイレクトメール)の送付
- 新聞折込広告の活用
- 自社Webサイトの開設
- SNS(Facebook、Instagramなど)の運用
- Googleビジネスプロフィールの活用など
これらの施策は、開業前に具体的な実施スケジュールを立て、予算配分を決めておくことが大切です。
各施策の効果を測定・分析し、PDCAサイクルを回しながら改善を重ねていくと、より効率的な集客が可能になります。
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詳しくは、以下のページをご覧ください。
飲食店開業までに必要な期間

飲食店の開業にかかる期間は、準備の規模などによっても異なりますが、一般的には12カ月ほどが目安です。
5~6カ月前くらいを目途に、資金調達まで済ませるようなスケジュールでいくとよいでしょう。
内装工事などは、想定以上の時間がかかる可能性もあります。
早めに着手し、余裕をもった準備をすることが大切です。
準備を済ませてスムーズな飲食店の開業を目指そう

飲食店の開業を成功させるためには、約12カ月という準備期間を有効活用し、やるべきことを着実に進めていくことが大切です。
各ステップのポイントを踏まえながら、順を追って準備をおこなってください。
準備不足で開業した場合、うまくいかずに、すぐに閉店してしまう事態に陥る可能性もあります。
着実に準備を進め、スムーズな開業を目指しましょう。