企業のセキュリティ体制の強化方法一覧と具体例!最新アプローチも紹介

近年、サイバー攻撃の高度化や情報漏えい事故の増加により、企業のセキュリティ強化は経営課題の最優先事項となっています。
しかし、多くの企業が「何から手をつければよいかわからない」「コストと効果のバランスが見えない」などの課題に直面しています。
単にセキュリティツールを導入するだけでは、真のセキュリティ強化は実現できません。
この記事では、企業がセキュリティ体制を強化するための実践的な方法を、基本的な対策から最新のアプローチまで体系的に解説します。
企業がセキュリティ体制を強化する方法一覧

現代のビジネス環境において、サイバー攻撃の高度化・多様化に対応するため、企業には包括的なセキュリティ体制の強化が求められます。
特に、情報セキュリティ対策では、以下の3大要素を満たすことが重要です。
- 機密性(Confidentiality):許可されたユーザーだけが情報にアクセスできる状態にする
- 完全性(Integrity):情報が他者によって改ざんされることなく、完全で正確な状態である
- 可用性(Availability):情報が必要なとき、いつでも利用できる状態にしておき、トラブルが発生したときにも使用できる環境を整備しておく
この要素を満たすために効果的な強化方法を、一覧でまとめました。
| セキュリティ強化方法 | 詳細 |
|---|---|
| 認証システムの多層化 | パスワードのみに依存せず、多要素認証を導入し、不正アクセスのリスクを大幅に低減する |
| 暗号化技術の導入 | 重要データの暗号化により、万が一、情報漏えいしたときでも被害を最小限に抑える |
| アクセス権限の最適化 | 従業員の役割に応じて適切なアクセス権限を設定し、必要最小限の権限付与を徹底する |
| データ保護とリカバリー体制 | 定期的なバックアップと復旧手順の確立により、インシデント発生時の事業継続性を確保する |
| システムの継続的な更新管理 | OSやソフトウェアを常に最新の状態に保ち、脆弱性を解消する |
| セキュリティガバナンスの確立 | 組織全体でセキュリティポリシーを策定し、統一的な管理体制を構築する |
| 従業員のセキュリティ意識向上 | 定期的な研修や訓練を通じて、人的要因によるセキュリティリスクを低減する |
対策の組み合わせにより企業は多層的な防御体制を構築でき、さまざまな脅威から情報資産を守るのに役立ちます。
具体的な内容を以下で紹介します。
認証システムの多層化
企業のセキュリティ体制を強化するには、多層的な認証システムの導入が重要です。
従来のID・パスワードによる単一の認証では、なりすましや不正アクセスのリスクが高まります。
以下の認証方法を組み合わせると、より強固なセキュリティを実現できます。
- 知識認証(パスワード、秘密の質問など)
- 所有認証(スマートフォン、ICカードなど)
- 生体認証(指紋、顔認証など)
二要素認証や多要素認証を導入すると、たとえパスワードが漏えいしても、第二・第三の認証要素により不正アクセスを防ぐことが可能です。
暗号化技術の導入
暗号化技術の導入により、企業は機密データを第三者から保護でき、セキュリティ体制を強化できます。
主要な暗号化方式には、高速処理が可能な共通鍵暗号方式(AES-256など)と、安全な鍵配送を実現する公開鍵暗号方式(RSA-2048など)があります。
実際の企業環境では、両方式の利点を組み合わせたハイブリッド暗号方式が効果的です。
データ本体は高速な共通鍵で暗号化し、その共通鍵を公開鍵暗号で保護しましょう。
また、暗号化の安全性は鍵管理に大きく依存するため、権限分離に基づく鍵管理体制の構築と、定期的な鍵ローテーション計画の策定が不可欠です。
アクセス権限の最適化
アクセス権限の最適化とは、企業の情報資産を守りながら、業務効率を損なわない権限管理体制を構築することです。
企業は以下の管理手法を理解し、組織の状況に応じて使い分ける必要があります。
| 管理手法 | 特徴 | 適用場面 |
|---|---|---|
| ロールベースアクセス制御(RBAC) | 役割ごとに一律の権限を設定 | 多数のユーザーを効率的に管理したい |
| 属性ベースアクセス制御(ABAC) | 部署・職位などの属性で柔軟に制御 | 状況に応じて動的に権限を変更したい |
| ルールベースアクセス制御 | 時間帯や場所などの条件で制限 | 業務時間外のアクセスを制限したい |
アクセス権限の最適化では、各従業員に業務遂行上、必要最低限の権限のみを付与する考え方「最小権限の原則(PoLP)」を徹底することが重要です。
これにより、権限の乱用や誤用によるセキュリティリスクを低減できます。
さらに、権限の付与・解除フローを一元化し、定期的に権限の棚卸しを実施すると、人事異動や組織改編にともなう権限の過剰付与を防げます。
内部不正の防止と業務効率の両立が可能となり、企業のセキュリティ体制を強化できるでしょう。
データ保護とリカバリー体制
データ保護とリカバリー体制を確立しておくと、サイバー攻撃やシステム障害が発生した場合でも企業の重要な情報資産を守り、迅速に事業を再開できる仕組みができます。
セキュリティ体制を強化するための基本的な対策例は、以下のとおりです。
| データ保護 | リカバリー体制 |
|---|---|
| ・重要データの定期的なバックアップ実施 ・バックアップデータの安全な別拠点への保管 ・データ暗号化による機密性の確保 ・アクセスログの記録と監視体制の構築 | ・BCP(事業継続計画)策定 ・RTO(復旧時間目標)とRPO(復旧時点目標)の設定 ・復旧手順書の作成 ・訓練の実施 |
特にサプライチェーンを構成する企業は、取引先企業への影響を最小限に抑えるために、インシデント発生時の迅速な対応と復旧をおこなうための体制が求められます。
システムの継続的な更新管理
企業のセキュリティ体制を強化するために、システムやソフトウェアの継続的な更新管理は重要な要素です。
新たな脆弱性は日々発見されており、パッチの適用が遅れると攻撃者に悪用される可能性が高まります。
特に注意すべき更新対象として、OS(オペレーティングシステム)のセキュリティパッチ、ミドルウェアやアプリケーションの更新、ファームウェアのアップデート、セキュリティソフトの定義ファイル更新があげられます。
効果的な更新管理を実現するために、以下のプロセスを確立しましょう。
- 管理対象となるシステムやソフトウェアを一覧化する
- ベンダーからの情報を収集する、セキュリティ情報サイトを監視する
- 自社環境への影響とリスクの分析をおこなう
- 優先順位を付け、スケジュール管理をおこなう
- 本番環境へ適用する前に動作確認をおこなう
更新作業は単発的な対応ではなく、PDCAサイクルに基づいた継続的な改善が求められます。
また、緊急性の高い脆弱性は、通常の更新サイクルとは別に迅速な対応体制を整備しておくことも重要です。
セキュリティガバナンスの確立
セキュリティガバナンスの確立は、単なる技術的な対策を超えて、組織全体でセキュリティに関する意識や取り組みを徹底させるための仕組みづくりを意味します。
企業のセキュリティ体制を強化するために、以下5つの活動を継続的に実施しましょう。
| 確立に向けた活動 | 詳細 |
|---|---|
| 1.方向付け(Direct) | 経営陣がリスク管理の方針を明確にし、最高情報セキュリティ責任者(CISO)が具体的な目標を設定する |
| 2.モニタリング(Monitor) | 設定した方針に従って、適切にリスク管理がおこなわれているかを継続的に監視する |
| 3.評価(Evaluate) | モニタリング結果を基に、目標達成度を評価し、必要に応じて改善をおこなう |
| 4.監督(Oversee) | 監査役が各活動の適切性を確認し、問題があれば改善を促す |
| 5.報告(Report) | ステークホルダーに対して、セキュリティ管理の状況を定期的に報告する |
これらの活動は、グループ企業や取引先企業を含むサプライチェーン全体に適用することが重要です。
近年のサイバー攻撃はセキュリティが脆弱な取引先企業を狙う傾向があるため、関連企業全体での取り組みが不可欠です。
従業員のセキュリティ意識向上
企業のセキュリティ体制の強化において、技術的な対策だけでは不十分です。
最終的な判断は人間がおこなうため、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることが重要になります。
意識向上に向けた取り組み例は、以下のとおりです。
| 取り組み例 | 詳細 |
|---|---|
| 定期的な教育プログラムの実施 | ・基本的なセキュリティ知識の講習 ・フィッシングメールの見分け方 ・パスワード管理の重要性 ・情報漏えいのリスクと対策 |
| 実践的な訓練の導入 | 標的型攻撃メールの模擬訓練で、実際のサイバー攻撃のイメージにつなげ、警戒心を向上させる。訓練後は必ずフィードバックし、改善点を共有する |
| セキュリティ文化の醸成 | 経営層がセキュリティ体制構築の重要性を理解し、組織全体でセキュリティを優先する文化を作る。日常業務内でセキュリティを意識する習慣を定着させ、人為的なミスによるインシデントのリスクを減少させる |
継続的な取り組みで、従業員全員が高いセキュリティ意識をもつ組織へと成長できます。
企業における最新のセキュリティ体制強化アプローチ

企業のセキュリティ体制強化にあたり、従来の防御手法だけでは不十分です。
サイバー攻撃の高度化・巧妙化に対応するため、最新のアプローチを取り入れることが重要です。
近年重要視されている考え方を解説します。
エンドポイント防御の重要性
従来の境界防御型セキュリティでは、社内ネットワークを安全な領域、社外を危険な領域として区別していました。
しかし、現在では従業員が社外から企業システムにアクセスすることが日常的になり、この考え方では十分な防御ができません。
これらの変化により、PCやスマートフォン、サーバー、IoTデバイスなどの「エンドポイント」は攻撃者にとって格好の侵入口となっています。
一度エンドポイントが侵害されると、そこを起点として企業ネットワーク全体に被害が拡大する可能性があるため、各端末レベルでの防御強化が不可欠です。
ゼロトラストモデルへの移行
企業のセキュリティ体制を強化するうえで、注目されている取り組みが「ゼロトラストモデル」への移行です。
これは、従来の境界防御型のセキュリティから、「何も信頼しない」ことを前提とした新たなセキュリティアプローチへの転換を意味します。
ゼロトラストモデルでは、社内ネットワークや企業が管理するデバイスであっても、すべてのアクセスを検証対象とし、以下のような確認をおこないます。
- アクセス元デバイスの承認状態
- 最新セキュリティソフトの導入状況
- マルウェア感染の有無
- 正規ユーザーによる認証かどうか
- 通常と異なる場所からのアクセスでないか
- 利用するクラウドサービスの脆弱性
このモデルへの移行により、クラウドシフトやテレワークの進展にともなう新たなセキュリティリスクに対応できるようになります。
特に、SaaS、PaaS、IaaSなどのクラウドサービス利用時や、モバイルデバイスからの社外アクセス時のセキュリティを向上させることが可能です。
ゼロトラストモデルは、サイバー攻撃対策を強化しながら、許可されたユーザーには場所を問わず柔軟なアクセスを提供できる点が大きな特徴です。
企業のセキュリティ体制を強化して情報資産を守ろう

高度化・多様化するサイバー攻撃に対応するため、企業には包括的なセキュリティ体制の強化が求められます。
基本的な方法としては、認証システムの多層化やアクセス権限の最適化、従業員のセキュリティ意識向上などがあげられます。
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