看護師がおこなう環境整備の目的とは?必要物品や注意するべき点まで紹介
環境整備は、患者さんが快適かつ安全に過ごせる環境を整えるために必要な業務です。
たとえば「転倒や転落の防止」「感染症の予防」など、さまざまな目的があります。
この記事では「看護師がおこなう環境整備の目的、必要物品や注意点」を紹介します。
また、環境整備の計画の立て方まで解説しているため、ぜひ最後までご覧ください。
環境整備をおこなう主な目的3つ
環境整備をおこなう主な目的は、以下の3つです。
- 患者さんが安全に過ごせる環境を整える
- 感染予防対策として清潔な環境を保つ
- コミュニケーションをとり変化を考慮する
患者さんが安全に過ごせる環境を整える
入院中における転倒・転落、挿入物の抜けなどを起こさないための予防策が大切です。具体的な方法として、以下の点に留意しましょう。
- 患者さんの手が届く範囲にナースコールを設置する
- ベッドを低位置に調整する
- ベッドに柵を取り付ける(3点柵まで)
- 患者さんのADLに合わせて物品を配置する
- 行動範囲の確認をする
- 脱げにくい履物を用意する
- 想定されるリスクを患者さんと共有する
- ベッド周辺・床頭台などの不要品を除去する
- 床が濡れがないか確認する
指示の理解や安静度が守れない患者さんに対しては、離床センサーやセンサーマットなどの検討が必要です。
環境整備は、患者さんのADLに沿って予防策を講じるのがコツです。患者さんの「できること」「できないこと」を把握して環境整備を進めましょう。
感染予防対策として清潔な環境を保つ
入院されている患者さんは、免疫力の低下や治療などによって、感染を起こしやすい状態になっているかもしれません。
患者さんのオーバーテーブル・ベッド、床頭台などを常に清潔に保つと、感染予防に効果的です。
消毒クロスで拭く際のポイントは、以下の通りです。
- 埃の除去
- 清潔箇所から汚染箇所に沿って拭く
- 一方向に拭く
- 一度拭いた箇所に戻らず拭く
- 拭き残し防止のため丁寧に拭く
拭き方を工夫すると、より長い時間清潔を保持できます。
日々の変化を気づきやすくする
ストレスは心身ともに影響を及ぼすおそれがあるため、患者さんにとってのストレス要因を取り除くのも重要です。入院生活における主なストレス要因は以下の通りです。
- 温度や湿度
- におい
- 騒音
- プライバシー
ストレスの要因を取り除く際は、以下に気をつけて取り組みましょう。
- エアコンで温度・湿度を調整する(状況に応じ、温罨法や冷罨法を実施)
- 異臭がした際は、部屋を換気する
- カーテンで空間を仕切り、プライバシーを保つ
- 患者同士のトラブル・騒音などがないか確認する
快適な環境により、患者の回復を早められます。
【年代別】環境整備で注意するべきポイント
年代別に環境整備で注意するべきポイントを以下に紹介します。
- 新生児・小児の場合
- 高齢者の場合
新生児・小児の場合
新生児・小児の場合は、主に「ベッド上からの転落」「ベッド付近による転倒」のリスクが考えられます。
また、子どもは目を離した隙にベッドから降り、どこかへ行ってしまうケースも想定されます。
子どもの目線に立つことで、ベッドを降りれる踏み台が設置されていないかなど、周辺を
観察するのも大切です。
ほかにも、新生児・小児はモノを選ばずに運ぼうとする傾向があるため、子どもの手が届く範囲に危険物を置かないようにするなど、配置を考えることも重要になります。
さらに、食べ物ではない物でも口に入れてしまうなど、誤嚥・窒息のおそれも考えられるため、注意しましょう。
高齢者の場合
高齢者の場合は、筋力や認知力などの低下で転倒リスクが高くなるため、モノの配置に限らず、以下の意識を持つと転倒の予防につながります。
- 滑りやすい靴を履かない
- 長い裾の服を着用しない
- 濡れている床がないか確認する
また、高齢者の患者さんが落ち着かなくなるケースに、環境の変化があります。ふだんと異なる環境がストレスを与えてしまい、認知症・せん妄などの発症リスクがあります。
ストレスとなる要因を整理し、患者さんにとって安全な環境を整えるのが大切です。
環境整備をする際の必要部品
環境整備を進める際は、事前準備が必要不可欠です。環境整備をする際の必要部品には、以下が挙げられます。
- マスク
- ゴミ袋
- 消毒用クロス
- 使い捨ての手袋
- 使い捨てのエプロン
加えて、標準予防策を遵守できると、看護師の感染予防につながります。
そのほか、患者さんに合わせ、必要なモノがあれば随時準備しておきましょう。
看護における環境整備の計画の立て方
看護における環境整備の計画の立て方は、以下の通りです。
- ①看護目標の設定
- ②適切な観察項目の設定
①看護目標の設定
まずは、看護目標の設定をおこないましょう。環境整備は、患者さんが「安全」「安楽」に過ごすための環境つくりが求められます。
また、看護師が患者さんとのコミュニケーションをとる機会を増やせるため、看護目標は以下をもとに決めていきましょう。
- 転倒・転落の未然防止
- 心が穏やかに過ごせる
- 環境を常に清潔に保つ(感染症防止)
- 看護師と患者さんのコミュニケーションを増やす(意欲向上)
患者さんごとに、状態の把握・配慮が可能となる看護目標を立てましょう。
②適切な観察項目の設定
効果的な環境整備を進めるには、適切な観察項目の設定が必要です。
以下は「清潔の管理」「安全の確保」「環境」「プライバシーの保護」をもとにした観察項目です。
- パジャマ・シーツ・ベッド周辺の汚損
- 部屋のゴミの有無
- 尿器・トイレにおける排泄物の有無
- 点滴・酸素チューブなどの整理
- ベッドの高さ・柵の状態把握
- 床濡れの有無
- 履物のサイズ・状態チェック
- 車椅子・ポータブルトイレの配置
- 医療機器の動作チェック
- 医療機器の配置
- 室温・湿度の管理
- 騒音レベル
- 部屋の明暗
- においの有無
- カーテン・ドアの開閉状況
- 患者さん同士の相性
上記の観察項目をもとに、観察結果を記録に残していくと、看護師が交代する際も、環境の維持が可能です。
一方で、患者さんの状態に応じて、観察項目を見直すケースもあります。効果的な環境整備を実現するためには、観察と記録、見直しを繰り返しおこなうのが大切です。
環境整備で患者さんの安全と生活を守ろう
この記事では「看護師がおこなう環境整備の目的、必要物品や注意点」を紹介しました。
環境整備によって、患者さんの安全確保と快適な療養環境を提供できます。また、看護師と患者さんとのコミュニケーションのきっかけづくりも可能になります。
一方で、ベッド周りの整理や清掃、消毒やモノの適切な配置などがあり、患者さんのADLや状況に応じた対応が必要です。
とくに新人看護師や環境整備の重要性を再確認したい方は、この記事を参考にしてみてください。