NASとファイルサーバーの違いとは?NASの構築手順やメリット・デメリットを解説!

社内の大量のデータを保存や共有、バックアップするためにファイルサーバーを構築しようとしている企業で、「NAS」の導入を検討している方は多いかと思います。
ですが、NASはファイルサーバーとは異なるものであり、ファイルサーバーにもいくつか種類があるため、実際にどういったものを導入すれば良いのか、どのように構築すれば良いのか分からないのではないでしょうか。
そこで今回は、NASの構築の手順やメリット・デメリット、ファイルサーバーとの違いを解説します。
ファイル共有環境としてNASについて正しく理解すれば、ITコストの最適化を図れるほか、業務効率化にもつながるため、ぜひ最後までご覧いただけたら幸いです。
NASとファイルサーバーとの違いとは?

NASとファイルサーバーはファイルの共有や保管するためのツールとして使用できる点が同じですが、ベースが異なるため、導入する際には注意が必要になります。
両者の違いを簡単に説明すると、NASはファイルを保存するための機器であり、ファイルサーバーはファイル管理を行うシステムという点です。
自社に適しているのはNASかファイルサーバーのどちらか分かれば導入もスムーズにいくので、チェックしておきましょう。
NASとは
「NAS」はNetwork Attached Storageの略称で、ネットワークに接続して読み書きができるハードディスクを指します。
外付けのハードディスクを進化させたもので、USB ケーブルを直接パソコンとは繋がず、家庭や会社のネットワーク(LAN)に接続して使います。
ネットワークを経由すれば、同時に複数台のPCからデータの共有したり、編集や保存したりすることが可能です。
ファイルサーバーとは

ファイルサーバーは、ネットワークを通じてファイルの保管・共有・バックアップを行うためのサーバーのことで、NASのような特定の機器とは違い、仕組みやシステムを指します。
任意のコンピューターやサーバー専用機、ソフトウェアなどを使って構築するため、やや手間がかかりますが、そのぶん拡張性とカスタマイズ性に優れているのが特徴です。
ファイルサーバーには、自社のネットワークで管理・運用する「オンプレミス型」と、インターネット上にファイルサーバーを構築する「クラウド型」があります。
「オンプレミス型」サーバー
オンプレミス型は、社内にサーバー機器を設置して管理や運用を行うサーバーです。
システムを構築するために機器や回線、ソフトウェアなどを自社で用意しなければならず初期費用がかかりますが、自社の運用に合わせてシステムを変更することができます。
社内に既存システムがあれば、同一システムの構築・連携も可能です。
「クラウド型」サーバー
クラウド型は、サーバーを自社に置かず、インターネット上に設置して運用するサーバーです。
自社に機器を手配するコストがかからず初期費用が抑えられる点や場所を取らない点がメリットとなります。
また、プランを変更やオプションサービスの追加によって手軽に容量を拡張でき、インターネットに接続されていれば、どの場所からでもアクセス可能です。
NASを導入するメリット

NASとファイルサーバーをとの違いを理解していただけたかと思いますが、ここでは自社にNASを導入するメリットをご説明します。
- 複数のパソコンでデータを共有できる
- 外部からのアクセスが可能
- バックアップ先としても利用できる
- 容量を複数台でシェアできる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
複数のパソコンでデータを共有できる
NASはデータ共有に強みを持っており、会社での導入に大いに役立ちます。
例えば、メールを使用してのデータ共有では業務効率が悪いだけでなく、複数人で同一のデータを編集するのは難しいですが、NAS上でデータ共有すると、複数のメンバーが同時に編集でき、業務効率が向上するでしょう。
また、NASではデータを共有する範囲を細かく設定できるため、プロジェクトや部署ごとにデータの閲覧や編集権限を与えて安全に管理ができます。
外部からのアクセスが可能

外部からオフィスに設置しているNASにアクセスできるため、大量のデータを持ち運ばずにNASに保存しているデータを外出先から見たり保存したりすることができます。
NASアカウントさえ知っていれば、フリーアドレスのオフィス、コワーキングスペースなどの共有パソコンからでもアクセス可能です。
また、NASはネットワーク上にあれば、どのデバイスでも接続できるため、パソコンからだけでなくスマートフォンやタブレットからでもアクセスできるため、利便性が高い点もメリットとなります。
バックアップ先としても利用できる
NASはデータのバックアップにも有用です。
NASには、複数のハードディスクをひとつのドライブのように認識・表示させる 「RAID機能」が搭載されており、冗長性が高く、安全なバックアップ体制を構築できます。
多重構造化されたハードディスクのおかげで、たとえ1台のハードディスクが故障した場合であっても、別のハードディスクから復旧できる可能性があるのです。
また、自動バックアップ機能も利用できるので、手動でバックアップ操作をせずにデータを安全に保つことができるでしょう。
容量を複数台でシェアできる
人によって扱うデータ量が異なるため、社内で同スペックのパソコンを使っても、仕事の内容に応じて容量が余る社員とひっ迫する社員が発生するリスクがあります。
ですが、NASを使ってファイルやデータを共有すると、それぞれの負荷を分散できるため、無駄が抑えられるでしょう。
NASを導入するデメリット

NASには多くのメリットがある一方、以下のデメリットがあるので押さえておきましょう。
- 導入や設定に手間がかかる
- ハードディスクが破損するとデータが消滅する危険性がある
詳しく説明していきます。
導入や設定に手間がかかる
インターネットに接続するNASは、ハッキングやサーバー攻撃に対する脆弱性があるため、セキュリティ面に配慮した適切な導入や運用が必要不可欠です。
そのため、ネットワークやNASに精通した人材が社内にいなければ、設定項目が多いNASの導入までに手間がかかるというデメリットがあります。
NASを使用するユーザーが多いほど、システム構築に時間や労力を必要とする点を押さえておきましょう。
ハードディスクが破損するとデータが消滅する危険性がある
物理的なハードディスクで構成されているNASは、ハードディスクの故障とデータ消失が連動してしまいます。
社内のデータをNASに集約して一括管理する場合、停電などによって一時的に使えなくなるだけでなく、衝撃などによって機器が故障してしまうとデータが消滅し、会社にとって大きな損失になる恐れがあるので注意しなければなりません。
そのため、データ消失のリスクを考えると運用を行なったりバックアップ体制を整えたりする必要があります。
NASの基本的な設定・構築方法

NASの導入に必要な機器や設定など、NASの基本的な構築手順をご説明します。
自社で全て行う場合、あらかじめネットワークやNASに詳しい人材を確保しておくと安心です。
①NASの導入に必要な機器を用意
NAS の導入に必要なものは、NAS本体とそれにアクセスをするパソコンやスマートフォンなどのデバイス、そしてNASと各デバイスを接続するためのLAN機器です。
会社でNAS を利用する場合は、LAN配線用のハブ、そしてデバイスの台数分の LANケーブルが必要になります。
②有線LANで接続し初期設定
NASの接続は有線LANで行います。
LANケーブルでNASと無線LANアクセスポイントのLAN端子をつなぎます。
もしLAN端子に空きがない場合は、スイッチングハブを増設しましょう。
接続が完了したら、電源を入れて各メーカーのWebサイトから機種ごとに備わっているNAS専用ソフトをダウンロードしてNASを立ち上げ、主に以下の項目を初期設定します。
- DCHP設定(自動で設定されるケースが多い)
- セキュリティ設定
- ルーターの設定
- ファイアウォールの設定
- 管理者のパスワード設定
- ルーターのアクセスログのチェック
- 管理者以外のユーザーの作成
- タイムゾーンの設定
- RAID設定
手順はメーカーによって異なるため、それぞれの手順に従って行いましょう。
③NASの構築
設定を行い使えるようになったら、自社の利用目的や使い勝手に合わせてNASを構築していきます。
大切なデータの消失を防ぐためにはバックアップが不可欠で、自動バックアップ機能が搭載されているNASも多いため、設定しておきましょう。
また、不正アクセスを防ぐためにも、編集が可能なユーザー、閲覧のみできるユーザーなどのアクセス制限をかけることも重要です。
NASの失敗しない選び方

実際にNASを導入する際に、様々なNAS製品がある中から自社に合うものをどのように選べば良いでしょうか。
ここでは、NASを導入する際に確認すべきポイントをご説明します。
家庭用か法人用かで選ぶ
NASには家庭用と法人用があり、それぞれ強みとなる機能が異なるのです。
ストレージ機能だけでなく写真や動画を管理する機能や音楽サーバー機能など、多彩な機能を持っているのに対し、法人向けのNASではセキュリティ機能や高速アクセスに重きを置いています。
そのため、会社でNASを導入する場合は、法人用のものを選ぶとファイルを安全に保管・共有でき、スムーズにアクセスできるでしょう。
利用する人数・データ容量で選ぶ
NASの各製品にはそれぞれ利用上限人数があるのが一般的で、想定される人数以上が利用するとアクセスが集中して速度が下がったり、バグが発生したりする可能性があります。
また、NASには搭載できるハードディスクの台数や保存できるデータ容量が異なるため、トラブルを防ぐためにも、事前に社内でNASの利用人数やデータ保存量などを確認しておくと良いでしょう。
試算されたものよりも余裕を持った容量のものを選ぶのがおすすめです。
完成品かNASキットかで選ぶ
NASには、最初からハードディスクが内蔵されている完成品と、ハードディスクを自身で用意し、取り付けるNASキット(NASケース)があります。
完成品は、初期設定が簡単で、購入後にネットワークへ接続してすぐに使うことができるので初心者に向いています。
一方、NASキットは接続に手間がかかりますが、カスタマイズ性が高く、新しいハードディスクへの交換や、増設がしやすいです。
RAID機能で選ぶ

RAIDは、複数台のハードディスクを組み合わせて1台のハードディスクとして運用し、冗長性の向上や大容量化を実現する仕組みです。
RAIDの構成レベルによって特徴が異なるため、用途に合わせて選んだり組み合わせたりする必要があります。
ここでは、主に使用されているRAIDの特徴をご紹介します。
耐障害性 | 読み書き速度 | 必要なHDDの台数 | |
RAID0 | × | ◎ | 2台以上 |
RAID1 | ◎ | △ | 2台以上 |
RAID5 | 〇 | 〇 | 3台以上 |
RAID6 | ◎ | △ | 4台以上 |
高速化できるメリットはあるものの、RAID0は故障のリスクが高いため、注意が必要です。
サポート体制が充実しているものを選ぶ
会社の大切なデータを管理する機器を選ぶ際は、メーカーのサポート体制がしっかり備わっているか見極める必要があります。
電話やWEBでのサポート窓口があるか、直接設定に訪問してもらえるか、メンテナンスが可能(有料か無料か)かなど、メーカーの保証の範囲を細部まで確認しておきましょう。
海外メーカーのものを選ぶ際は、日本語での対応もできるかチェックしておくのがおすすめです。
NASを理解してファイル共有に役立てよう

ファイルの共有や安全なバックアップに最適なNASは、家庭での利用だけでなく企業においても大きなメリットがあるのです。
ファイルサーバーとNASはファイル共有システムを構築するために必要である点は同じですが、NASはファイルを保存するためのハードディスクであり、ファイルサーバーはファイル管理システム、という大きな違いがあるので、覚えておきましょう。
導入に必要となる時間や手間、そして運用の手間がファイルサーバーと比較してかからないNASの導入を検討している企業の方は、ファイルサーバーとの違いを理解し、NASの選び方や活用方法を身に付けたうえで、社内で構築するのに役立てていただけたらと思います。