インボイス制度の経過措置とは?適用期間や確認するべき注意点3つ
インボイス制度によって、「円滑な税金徴収」と「脱税の防止」につながります。
そして、インボイス制度の導入に伴い、特定の事業者を対象とした経過措置が設けられています。
この記事では「経過措置について、適用期間や確認するべき注意点」を紹介します。
また、経過措置の申請手順まで解説しているため、ぜひ最後までご覧ください。
インボイス制度の経過措置とは?
インボイス制度に登録していない免税事業者との取引のある企業は、2023/10/01以降は、税金の負担が増えます。
そのため、課税事業者への負担軽減をするため、国税庁は「インボイス制度導入直後の6年」を対象に、仕入税額控除を可能としました。
課税事業者は、免税事業者などの請求書でも、仕入税額控除を受けられます。
インボイス制度の経過措置の期間や適用される事業者は?
インボイス制度の経過措置の適用される「期間・事業者」を、それぞれ紹介します。
- 経過措置の適用が受けられる期間
- 経過措置の適用が受けられる事業者
- 経過措置の適用が受けられない事業者
経過措置が適用される期間
経過措置が適用される期間は、インボイス制度開始から6年間のみです。
経過措置について、期間と控除割合は以下を参考にしましょう。
- 2023/10/01〜2026/09/30:80%控除
- 2026/10/01〜2029/09/30:50%控除
- 2029/10/01以降:控除なし
経過措置が適用される事業者
もしインボイス制度から「課税事業者」になった場合、経過措置が適用されます。
ほかには、免税事業者が課税事業者選択届出書を提出し、登録を受けてインボイス発行事業者となる事業者も対象です。
対象事業者は、帳簿や請求書を保存する際に、経過措置の適用を受ける課税仕入を必ず記載しましょう。
また、消費税額控除の対象外の分を費用に上乗せする方法や、雑損失にする方法など、会計処理における事柄をあらかじめ決めておきましょう。
経過措置が適用されない事業者
経過措置の適用外となるケースは、以下の通りです。
- すでに課税事業者になっている
- 指定期間の課税売上高が1,000万円を超えている
- 特例で課税期間が1か月・3か月と短くなっている
- 「新設の法人」もしくは「特定の新規設立法人」である
- 合併・相続・分割などがあった
- 課税事業者だが「一定の固定資産を購入」した
上記の場合、経過措置が適用外となり、従来通り「消費税の仕入税額控除」が必要です。
インボイス制度の経過措置におけるメリットとデメリット
経過措置におけるメリット・デメリットを、それぞれ紹介します。
- 経過措置におけるメリット
- 経過措置におけるデメリット
経過措置におけるメリット
インボイス制度の経過措置により得られるメリットは、以下の3つです。
- 課税事業者の税金の負担が軽減される
- インボイス制度を段階を踏んで導入ができる
- インボイス制度の試験運用ができる
課税事業者は「免税事業者との取引時の消費税率」を低い利率で計算が可能なため、納税の負担軽減ができます。
また、税務処理・事業者間の取引方法が変わるため、段階を踏んで制度を受けられると、インボイスを適応する際の負担軽減が可能です。
さらに、インボイス制度導入前に経過措置を利用すると、試験的に制度の運用や改善、調整が期待できます。
経過措置におけるデメリット
経過措置におけるデメリットは、以下の3つです。
- 税務処理が複雑になる可能性がある
- 納税する金額が増加する可能性がある
- 課税事業者以外に対象者が限定される
取引において、税金の計算や請求書作成の際に「通常の取引」と「2割特例」を分ける必要があるため、管理が複雑になります。
また、税金の計算に誤りがあった場合、ペナルティを課せられる可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
さらに、事業者との取引では「消費税控除」よりも「控除金額が減る」ため、取引先を選定する際は、あらかじめ課税対象の事業者と取引すると節税につながります。
加えて、経過措置の適用を受けるためには、申請する免税事業者が課税事業者へ転換し、「適格請求書発行事業者」の登録が必要です。
免税事業者との取引で確認するべき注意点3つ
免税事業者と取引するうえで確認するべき注意点を、以下に3つ紹介します。
- 適格請求書発行事業者かどうか取引先の登録状況を確認する
- 免税事業者との「取引条件」「契約内容」を見直す
- インボイス制度導入を取引先へ周知する
適格請求書発行事業者かどうか取引先の登録状況を確認する
インボイス制度では、適格請求書発行事業者に登録された課税事業者の仕入に対してのみ、仕入税額控除が認められます。
そのため、取引先ごとの「適格請求書発行事業者の登録状況」をあらかじめ確認しておきましょう。
適格請求書発行事業者の登録状況は、「国税庁の適格請求書発行事業者公表サイト」で確認がとれます。
登録されていない取引先がある場合は、取引先に応じて登録を促すなどの対応が求められます。
免税事業者との「取引条件」「契約内容」を見直す
インボイス制度を導入する際は、主に免税事業者との「取引条件」「契約内容」をそれぞれ見直しましょう。
たとえば、取引価格は仕入税額控除が制限される分をあらためて交渉可能です。
ただし、再度交渉をする際は売り手と買い手でしっかりと話し合いし、買い手の都合のみで価格を再設定をしないように注意が必要です。
また、商品や成果物の受領拒否、返品などの負担の要請は、売り手に不利益を与える場合や正当な理由がない場合、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」でトラブルになる可能性があるため注意しましょう。
インボイス制度導入を取引先へ周知する
課税事業者が免税事業者との取引を続けていく場合は、インボイス制度導入を取引先へ周知しましょう。
また、免税事業者に対し、適格請求書発行事業者への登録や課税事業者への移行を促せる場合はあらかじめしておくのがおすすめです。
ただし、インボイス制度への登録や移行に関して「強制」や「対応に応じないと取引停止」「価格を引き下げる」などを通告した場合、「独占禁止法」で問題となる可能性があるため注意しましょう。
インボイス制度の経過措置でよくある質問
経過措置に関して、以下によくある質問をまとめました。
- インボイス制度の経過措置に求められる要件は?
- インボイス制度の経過措置の申請に必要な条件はある?
- インボイス制度の経過措置の申請手順とは?
インボイス制度の経過措置に求められる要件は?
経過措置に必要な要件は、以下の通りです。
- 帳簿に関する要件
- 請求書に関する要件
- 電磁記録の保存に関する要件
帳簿は「取引先の氏名・名称・取引日・取引内容・取引」などにより発生する「支払対価の金額」の記入が必須となります。
また、請求書には、書類を作成した者の氏名・名称・取引日・取引内容・税込価格(税率ごとの合計)・書類の交付を受ける事業者の氏名・名称を、それぞれ記載する必要があります。
加えて、請求書の写しや請求書に係る電磁的記録の保存が必要です。
インボイス制度の経過措置の申請に必要な条件はある?
経過措置で求められる申請条件は、以下の通りです。
- 事業者の売上の規模
- インボイス制度における経過措置の対象事業者
売上や取引する際の規模が一定の基準を満たさない場合は、中小規模事業者として適用されます。
一方で、 インボイス制度開始時に免税事業者から課税事業者へ転換し、適格請求書発行事業者へ登録をした場合は、経過措置の対象です。
加えて、前々年度の事業における「課税売上:1,000万円以下」が条件となります。
インボイス制度の経過措置の申請手順とは?
インボイス制度の経過措置を申請する方法は、以下の通りです。
①申請書を提出する:2割特例を受けるには、税務署が指定する申請書の提出をします。
※申請書は、国税庁のWebサイトからダウンロードもしくは、税務署の窓口で受け取り可能です
②必要書類を添付する:申請書には特定書類の添付が求められるケースがあります。
※主に「事業者の登記簿」「事業内容の説明書」「前年度の売上実績」などがあります。
③審査・承認を受ける:税務により、提出した申請書・添付書類などは審査され、結果を待ちます。
④結果を受け取る:承認後、経過措置が適用されます。
経過措置を活用して納税の負担を軽減しよう
この記事では「経過措置について、適用期間や確認するべき注意点」を紹介しました。
インボイス制度の経過措置は、制度開始後6年間の仕入税額控除を可能にし、課税事業者の負担を軽減します。
経過措置を受けるには、帳簿や請求書の保存、記載内容の確認が必要です。
とくに中小規模事業者や免税事業者から課税事業者へ転換した方は、この記事を参考にしてみてください。