インボイス制度のメリットとデメリットは?目的や対応する際のポイント4つ
インボイス制度によって、区分記載請求書に必要な追加項目の記載・保存などをしないと仕入税額控除を受けられなくなります。
そのため、インボイス制度の理解が追いついていない場合、納税する支払い額や取引先にも影響を及ぼしかねません。
この記事では「インボイス制度のメリットとデメリット、目的や対応時のポイント」を紹介します。
また、インボイス制度導入後の経過措置まで解説しているため、ぜひ最後までご覧ください。
インボイス制度の目的とは
インボイス制度導入の背景には、1989年4月の消費税導入があります。
当時、消費税が導入された際、国民の反発から「一部の小規模事業者は納税義務を免除する」といった免税事業者制度が採用されました。
この免除された税金を「益税」といいます。
2023年10月1日からは、「消費者から預かった消費税を自分の利益とせずに、国に納税してください」といった「益税」をなくすのが、本来のインボイス制度の目的になります。
インボイス制度に対応する際のポイント4つ
インボイス制度に対応する際のポイントは、以下4つです。
- ①適格請求書発行事業者の登録申請をする
- ②「適格請求書の要件」に合わせた請求書のフォーマットをつくる
- ③経理業務に関するフローを見直しする
- ④インボイス制度対応のシステム導入
①適格請求書発行事業者の登録申請をする
適格請求書に記載するインボイスの登録番号を取得するには、「適格請求書発行事業者」になる必要があります。
この「適格請求書発行事業者」になるためには、税務署への申請が必要です。
税務署に出向く
郵送する
e-Taxを利用する方法があるため、自分に適したものを選び、申請しましょう。
②「適格請求書の要件」に合わせた請求書のフォーマットをつくる
インボイス制度に対応するために、「適格請求書の要件」に合わせた請求書のフォーマットをつくる必要があります。
適格請求書に記載が必要な項目は、以下の6つです。
- ①適格請求書発行事業者の氏名又は名称・登録番号
- ②取引年月日
- ③取引内容(軽減税率の対象品目である)
- ④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
- ⑤消費税額など(請求書1枚当たり、税率ごとに1回ずつ端数処理が必要)
- ⑥書類の交付を受ける事業者氏名・名称
従来の請求書との変更点は「①・④・⑤」です。
③経理業務に関するフローを見直しする
インボイス制度に対応にあたり、とくに請求書管理と取引先(課税事業者・免税事業者)の確認業務が複雑になるおそれがあります。
少しでも負担を軽減するためには、今までの方法で不足する作業を整理し、今後必要となる業務のフロー改善を進めましょう。
④インボイス制度対応のシステム導入
インボイス制度が始まり、企業ごとに新制度への対応が求められるため、経理業務における負担増加は免れません。
そのため、インボイス制度対応のシステム導入をすると、経理業務の効率化につながる場合があります。
たとえば、「適格請求書のフォーマットで請求書を作成できる会計システム」を利用する、「電子帳簿保存法に対応した保管ができるシステム」を活用して保管の手間を削減するなどです。
次章では、電子帳簿保存法に対応した保管ができるおすすめのサービスを紹介します。
インボイス制度のメリット3つ
インボイス制度のメリットを、以下に3つ紹介します。
- 正確な軽減税率を確認できる
- 不正防止ができる
- 業務の効率化ができる
正確な軽減税率を確認できる
インボイス制度により、正確な軽減税率を確認できるようになりました。
2019年10月に消費税10%への引き上げおよび、生活必需品・飲食などを対象に軽減税率8%が導入されました。
現在は、使用している請求書では消費税率が混在しているため、商品ごとに税率を区別して計算する必要があります。
インボイスを導入すると、「消費税額」と「消費税率」を正確に記載ができるため、業務の簡素化が実現できます。
不正防止ができる
インボイス制度は納税の不正防止に効果的です。消費税増税に伴う軽減税率の導入により、食品などの一部商品は8%と決められています。中には、消費税10%の商品を8%と不正に記載し、利益を得る行為が発生しています。
インボイスの導入によって、取引点数に応じた消費税額が明確になるため、不正を軽減できます。
加えて、事業会社にとっては仕入先の不正が減り、自社における税額を負担軽減できます。
業務の効率化ができる
取引企業のオンライン化が進んだことで「従来の請求書」や郵送にかかる「印刷・発送業務」が不要になり、業務効率が大幅に削減できます。
また、請求書を電子的に発行できると、紙に請求書を印刷・郵送する手間やコストを削減できます。
そのため、請求書受け取りの際も、紙の印刷データをあらためて入力する手間がなくなります。加えて、自動でデータを取り込む際も簡単です。
控えを含む請求書の保管も電子的におこなえるため、保管スペースの確保やファイリング業務も不要になります。
インボイス制度のデメリット3つ
インボイス制度のメリットを、以下に3つ紹介します。
- 納税負担が増える可能性がある
- 仕入税額控除の金額減少のおそれがある
- 免税事業者との取引継続が難しくなる
納税負担が増える可能性がある
消費税の納付が免除されている事業者は、インボイス制度に対応しようとすると納税額が増えます。
適格請求書を発行できる適格請求書発行事業者は、消費税の課税事業者のみがなれます。
消費税の納付が免除されている免税事業者が適格請求書の発行を希望する場合、課税事業者への切り替えをおこなわなければいけません。
しかし、課税事業者になると、免除されていた消費税の納税義務が課せられるため、税金を多く納めなければならないケースもあります。
仕入税額控除の金額減少のおそれがある
免税事業者との取引がある課税事業者は、インボイス制度の導入によって仕入税額控除の金額減少のおそれがあります。
仕入税額控除とは、課税売上高にかかる消費税から、課税仕入れの消費税額を差し引くことです。
今までは、免税事業者からの仕入れた場合でも、仕入税額控除の対象でした。しかし、インボイス制度が導入された後は、原則として適格請求書の交付を受けて、保存するまでが税額控除の条件になります。
そのため、適格請求書を発行できない事業者から仕入れた場合、支払った消費税額を仕入税額控除の対象にできません。
免税事業者との取引継続が難しくなる
免税事業者は、適格請求書を交付できないため、課税事業者との取引継続が難しくなるおそれがあります。
適格請求書を交付できない場合、課税事業者にとって仕入税額控除の対象外となってしまうため、デメリットになります。
そのため、免税事業者が継続して取引をしていくには、「仕入税額控除の対象にならない分を値引きする」「課税事業者となり、適格請求書を発行する」などの対応が求められます。
インボイス制度導入後の経過措置2つ
インボイス制度導入後の経過措置を、以下2つ紹介します。
- 6年の経過措置が設けられている
- インボイス発行事業者への登録を取り下げできる
6年の経過措置が設けられている
2023年10月1日までにインボイス発行事業者になっていない場合でも、6年の経過措置が設けられています。
- 2023年10月1日〜2026年9月30日まで控除割合80%
- 2026年10月1日〜2029年9月30日まで控除割合50%
最初の3年間は80%控除され、残りの3年間は50%控除されます。2029年9月30日までは「課税事業者」になるかを検討できる期間として、経過措置が設けられています。
そのため、免税事業者は、2023年10月1日までにインボイス発行事業者にならなくても、考える時間があります。
発注する事業者は、取引先に対して期間内に登録番号の確認をとるなど事前に把握して判断しましょう。
インボイス発行事業者への登録を取り下げできる
インボイス発行事業者は、「登録取消届書」を税務署に提出すると、課税期間の初日にインボイス発行事業者の「登録の効力」を失くせます。
結果的に、免税事業者がインボイス発行事業者になっても取消可能です。
しかし、2023年10月1日を過ぎると取消できる対象期間が最短でも翌年となります(法人の場合は翌事業年度)。
また、30日前までに「登録取消届出書」の提出が必須となる規約があるため、発注者は、既存の仕入先に対して、10月1日よりも前にインボイス登録の有無を確認が必要です。
インボイス制度導入のポイントを抑えて適切に対応しよう
この記事では「インボイス制度のメリットとデメリット、目的や対応時のポイント」を紹介しました。
インボイス制度では、正確な税額計算と不正防止が可能になり、取引の透明性向上につながる点も特徴的です。
一方で、事務負担の増加や取引先の見直しによって、登録番号の取得や請求書のフォーマットの変更、取引先の確認などの実施が求められます。
とくに中小企業や個人事業主の方は、この記事を参考にしてインボイス制度への対応を進めてみてください。