企業のセキュリティレベルを向上するには?強化方法を解説

近年、企業を狙ったサイバー攻撃が急増しており、セキュリティレベルの向上は企業経営における重要課題となっています。
情報漏えいやシステム停止などは損失を招きやすく、企業がこれを防ぐためには、体系的なセキュリティ対策の実施が不可欠です。
この記事では、企業のセキュリティレベルを効果的に向上させるための具体的な方法を詳しく解説します。
長期的な視点での取り組みについても紹介しますので、企業の情報資産を守るためにぜひ参考にしてください。
企業におけるセキュリティレベル向上の必要性

適切なセキュリティ対策が実行されていない場合、企業は深刻な被害を受ける可能性があります。
おもな被害リスクは、以下のとおりです。
- システム停止による機会損失
- 企業イメージや信頼性の失墜
- 損害賠償請求など法的責任の発生
これらの被害は自社だけでなく、取引先企業や顧客にも波及するため、企業には総合的なセキュリティレベルの向上が強く求められています。
また、2022年の個人情報保護法の改正により、情報漏えい時の報告・通知が義務化されました。
要配慮個人情報が含まれる事態、財産的被害が生じる恐れがある事態、不正の目的をもっておこなわれた漏えい等が発生した事態、1,000人を超える漏えい等が発生した事態においては、企業はおおむね3~5日以内に個人情報保護委員会へ報告しなければなりません。
▶参考:個人情報保護委員会「漏えい等報告・本人への通知のについて」
個人情報取扱事業者が必要な報告をしなかった場合、個人情報保護委員会により違反を是正するための勧告や命令がおこなわれる可能性があります(個人情報の保護に関する法律148条)。
さらに、その勧告・命令を受けても適切に対処しなかった場合、公表の対象となる(個人情報の保護に関する法律148条4項)ほか、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります(個人情報の保護に関する法律178条)。
企業は被害リスクを抑えながら適切な対処をとれるよう、セキュリティレベルを向上していくことが大切です。
企業のセキュリティレベルを向上するための方法

企業のセキュリティレベルを向上するには、包括的なアプローチが必要です。
以下6つの方法を組み合わせると、効果的なセキュリティ体制を構築できます。
- 情報セキュリティポリシーの策定
- ルールの策定
- デバイスへのセキュリティシステムの導入・運用
- 定期的な従業員教育によるセキュリティリテラシーの向上
- 取引先企業とのセキュリティに関する協議
- 事故発生時に備えた対応手順の明確化、周知
特に重要なのは、従業員教育です。
どれほど優れたツールやルールを導入しても、それを実際に運用する従業員の適切な判断と行動ができる能力が低ければ、十分な効果が得られません。
セキュリティ強化方法をそれぞれ詳しく解説しますので、企業の導入検討に役立ててください。
情報セキュリティポリシーの策定
情報セキュリティポリシーは、企業の情報資産を保護するための基本方針と行動指針を定めた重要な文書で、セキュリティレベルの向上に不可欠な要素です。
企業の情報セキュリティに対する姿勢を明確にし、従業員全体が一貫した対策を実施するためのガイドラインとなります。
情報セキュリティポリシーは、おもに以下3つの階層で構成されます。
| 階層 | 内容 |
|---|---|
| 基本方針 | 企業の情報セキュリティに対する基本的な考え方と宣言 |
| 対策基準 | 基本方針を実践するための具体的な対策内容 |
| 実施手順 | 実際のセキュリティ対策をおこなう詳細な手順 |
策定時は、保護すべき情報資産を明確に特定し、企業の規模や業種に応じてカスタマイズすることが重要です。
また、策定後は社内全体への周知徹底を図り、定期的な見直しをおこなうと、変化する脅威に対応できる実効性のあるポリシーとして機能させられます。
具体的なルールの策定
企業の情報セキュリティポリシーを策定したら、セキュリティレベル向上のために、具体的な実施ルールを定める必要があります。
ポリシーが基本方針を示すものであるのに対し、ルールは日常業務で従業員が守るべき具体的な行動指針となります。
主要なルール策定項目は、以下のとおりです。
| 分野 | 具体的なルール例 |
|---|---|
| アクセス管理 | パスワードの複雑性要件、定期変更 |
| 情報の取り扱い | 機密情報の分類・保存・廃棄方法 |
| 外部デバイス | USBメモリーなどの持ち込み・使用制限 |
| 通信・ネットワーク | 私的利用の禁止、不審メール対応 |
| 事務所の入退室管理 | ICカード認証、外部来訪者同伴ルール、不在時の施錠対応 |
ルールは現実的で実行可能な内容にし、曖昧な表現を避け、具体的に記載しましょう。
全従業員が理解しやすい形で文書化することも大切です。
また、業務効率を著しく低下させない範囲で、セキュリティレベルとのバランスを取ることが重要です。
セキュリティシステムの導入・運用
企業のセキュリティレベル向上には、各デバイスに適切なセキュリティシステムを導入し、継続的に運用することが不可欠です。
特に注目すべきは、UTM(統合脅威管理)の導入です。
UTMは複数のセキュリティ機能を統合したソリューションで、効率的な運用を実現します。
たとえば、以下の機能が1台に集約されています。
| 機能名 | 役割 | 効果 |
|---|---|---|
| ファイアウォール | 不正アクセス防止 | 外部からの侵入を遮断 |
| アンチウイルス | マルウェア検知・駆除 | ウイルス感染を防止 |
| IDS / IPS(不正侵入検知・防止システム) | 攻撃パターン検知 | リアルタイム攻撃防御 |
| Webフィルタリング | 危険なWebサイトへのアクセス制御 | 不正なWebサイト閲覧を防止 |
| VPN機能 | 暗号化通信 | 安全なリモートアクセス |
セキュリティシステムの導入により、複雑な管理を簡素化しながら強固な防御を構築しやすくなります。
なお、以下の記事では、おすすめのセキュリティソフトを紹介しています。
あわせてご覧ください。
セキュリティソフトの種類の選び方は?おすすめ6メーカーご紹介
定期的な従業員教育によるセキュリティリテラシーの向上
企業のセキュリティレベル向上において、従業員のセキュリティリテラシー向上はもっとも重要な要素の一つです。
どんなに優れたセキュリティシステムを導入しても、従業員が適切な知識をもたなければ効果は限定的となります。
効果的な教育方法としては、以下があげられます。
| 手法 | 特徴 | 実施頻度 |
|---|---|---|
| eラーニング | 場所・時間を選ばず実施可能 | 月1回~四半期1回程度 |
| 集合研修 | グループワークで主体的に学習できる | 半年~年1回程度 |
| 日常的な注意喚起 | セキュリティチェックデーの設定 | 月1回程度 |
教育効果を高めるポイントは「継続性」です。
年1回の研修では知識の定着が困難なため、四半期ごとや月1回など頻度を上げて従業員にとって情報セキュリティが身近な存在となるように努めましょう。
また、学んだ内容を実践するために、定期的なテストやチェックリストを実施することも必要です。
知識の定着度を確認し、不足している場合は再教育をおこなってください。
取引先企業とのセキュリティに関する協議
サプライチェーン全体のセキュリティレベルは、そのなかでもっともセキュリティレベルが低い組織と等しくなります。
そのため、取引先企業とのセキュリティ協議を積極的におこなうことが、セキュリティレベルを向上するうえで大切です。
協議における重要なポイントは、以下のとおりです。
| ポイント | 詳細 |
|---|---|
| 現状把握と要請 | ・取引先企業のセキュリティ対策状況を把握する ・必要に応じてセキュリティ対策の実施を要請する ・過度に萎縮せずに積極的な協議を実施する |
| 適切な価格交渉 | ・セキュリティ対策によるコスト上昇分を考慮する ・価格交渉の機会を積極的に設ける ・費用負担の在り方について十分な協議を実施する |
また、法的リスクへの配慮も必要です。
取引上の地位を利用した一方的な要請は、独占禁止法上の優越的地位の濫用として問題となる可能性があります。
そのため、取引先企業との対等な立場での協議が重要になります。
事故発生時に備えた対応手順の明確化、周知
企業のセキュリティレベルを向上するためには、事故発生時を想定した準備も重要です。
セキュリティインシデントが発生したときに被害を最小限に抑えるためには、事前に対応手順を明確化し、全従業員に周知することが不可欠になります。
対応手順の明確化すべき項目は、以下のとおりです。
- 事故発生時の初動対応(報告先、連絡手順)
- 被害拡大防止のための緊急措置
- 関係者への連絡体制と役割分担
- 復旧作業の手順と優先順位
- 外部機関(警察、専門業者)への連絡方法
これらの手順をマニュアル化し、定期的な訓練を実施すると、実際の事故発生時に迅速かつ適切な対応が可能となります。
マニュアルは定期的に見直し、最新の脅威や企業環境の変化に合わせて更新しましょう。
継続的に企業のセキュリティレベルを向上するために必要な取り組み

企業のセキュリティレベルを一度向上させても、新たな脅威は日々発生するため、継続的な改善が不可欠です。
以下の取り組みを定期的に実施すると、セキュリティ体制の持続的な強化が可能となります。
- 定期的なセキュリティ診断と評価
- 脆弱性管理とアップデート体制
- セキュリティ投資の効果測定
変化する脅威環境に対応し、セキュリティレベルを継続的に向上させられるよう、それぞれの取り組み方法を確認しましょう。
定期的なセキュリティ診断と評価
企業のセキュリティレベルを継続的に向上させるためには、定期的なセキュリティ診断と評価が不可欠です。
以下のようなセキュリティ診断をおこないましょう。
| 診断種類 | 対象領域 | 特徴 |
|---|---|---|
| 脆弱性診断 | Webアプリケーション・ネットワーク | SQLインジェクション、XSSなど一般的な脆弱性を検出 |
| ASM(Attack Surface Management) | 攻撃対象の領域全体 | 潜在的な攻撃経路を可視化・管理 |
診断実施のポイントは、以下のとおりです。
- 年1回以上の定期実施が推奨される
- システム変更時には必ず診断を実施する
- 自動診断ツールと専門家による手動診断を組み合わせる
- 診断結果に基づき優先順位を付けて対策を実施する
定期的な診断でシステムの健康状態を継続的にチェックし、最新の脅威に対応できる体制を構築することが重要です。
脆弱性管理とアップデート体制
企業のセキュリティレベルを継続的に向上させるには、システムの脆弱性を適切に管理し、迅速にアップデートをおこなう体制の構築が必要です。
脆弱性管理では、以下の3つのプロセスを体系的に実施しましょう。
| プロセス | 脆弱性管理の方法 |
|---|---|
| 1.検知 | ・ベンダーや業界団体から脆弱性情報を収集する ・自社システム構成要素への影響を評価する |
| 2.判断 | ・CVSSスコア(ベンダーに依存しない共通の評価方法)を活用して緊急度を判定する ・業務影響とリスクの大きさを分析する |
| 3.対応 | ・パッチ適用やワークアラウンド(応急処置、代替手段)を実施する ・対応状況の一元管理と進捗追跡をおこなう |
また、資産管理台帳を活用してシステム構成を把握し、脆弱性対応の指示から結果報告までを体系化すると、対応漏れを防ぎ、常に最新の対策状況を把握できます。
これらの取り組みにより、サイバー攻撃を未然に防ぐことが可能になります。
企業のセキュリティレベルを向上して情報資産を守ろう

企業のセキュリティレベルを向上するには、情報セキュリティポリシーや具体的なルールの策定、セキュリティシステムの導入・運用、定期的な従業員教育によるセキュリティリテラシーの向上などが必要です。
また、取引先企業とセキュリティに関する協議をしたり、事故発生時に備えた対応手順を明確化して周知したりするのも効果的です。
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